油山福岡市民の森

 

中心部から車でわずか30分。気軽に自然の満喫とSDGsの取組の地へ

 

油山(あぶらやま)は、福岡市城南区・早良区・南区にまたがる標高597mの山です。その名の由来は、8世紀にインドから渡来した清賀上人が、この山に群生する白椿の実から椿油を精製したことから。日本で初めて椿油を使って灯火をともした文化の発祥地、それが油山なのです。

 

福岡市中心部から車で約30分という好立地で、昭和44年(1969年)には、市民のレクリエーション・青少年育成の場として『油山市民の森』がオープン。また市内酪農家の子牛を育てる公共育成牧場『もーもーらんど(油山牧場)』も、開設から四半世紀がたちました。そこで令和5年4月、福岡市は2つを統合し、複合体験型アウトドア施設『ABURAYAMA FUKUOKA(アブラヤマ フクオカ)』としてリニューアルオープンさせました。

 

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複合施設を手掛けたのは、JR九州リージョナルデザイン株式会社です。同社の取締役兼営業部ゼネラルマネージャーの権丈聡司(けんじょう・さとし)さんによると、「油山は鉄道で行ける場所ではないので、本来JR九州が携わるところではありません。しかし福岡市は面積の3分の1が森林で、都市と自然が近いことが魅力です。この油山の自然を活かすことで福岡がもっと元気になるのではないか。それがJRグループの役割だと考えています」と語ります。

コンポストや太陽光発電など、SDGsの取組みも行う施設にリニューアルするにあたってのコンセプトは、「ABURAYAMA BACK TO NATURE FUKUOKA」です。「油山福岡」の間に「自然に帰れ」という言葉を挿入したものですが、まさにこれがJRグループの想いです。ロゴは頭文字を取って「ABY BNF」。デザイナーは、楽天グループなどのデザインも手掛けた佐藤可士和さんに依頼しました。

 


廃棄せずに堆肥を作って循環させる(SDGs)

リニューアルした施設は、キャンプ場やバーベキュー場・農園・レストラン・アウトドアショップ・カフェなど。以前の油山牧場と同じように牛の乳しぼりや、ヒツジ・ヤギへの餌やり、乗馬などの体験もできます。動物のフンも堆肥として活用し、農場で野菜を育てています。

そんな安心安全な肥料で育てた野菜をレストランで提供。野菜くずはコンポストに入れて、微生物の力を利用して堆肥を作るなど、循環させています。

体験型観光農園『四時(しいじ)農場』は、旬の野菜の収穫を楽しめます。「四時」とは「朝昼夕夜」や「春夏秋冬」といった時の移ろいを表す言葉。その季節ならではの新鮮野菜を採ってピザにトッピングし、特製石窯を使い高温で60~90秒で一気に焼き上げたピザを味わうこともできます。

貸し農園『シェア畑』は、近隣の住民が野菜づくりを楽しめる菜園です。農具や肥料、苗や種などすべて用意され、手ぶらで来ても安心。「菜園アドバイザー」が野菜の育て方を教えてくれるので、野菜づくり初心者が週1回くらい来園しても、栽培から収穫まで楽しめます。不要な葉っぱなどコンポスト用の箱に入れるので無駄がありません。


 

牧場や菜園の農産物をふんだんに使うレストラン

『チーズスタンド』では牧場の牛乳を使用し、店内の工房で添加物を一切使わずに丁寧にフレッシュチーズを作っています。できたてチーズを使ったチーズプレートや、サンドイッチやピッツァなどが味わえるチーズ専門店です。

レストラン『sola aburayama(ソラ アブラヤマ)』では、海や福岡市街を眺めながら、農園のとれたて野菜などの食材を使ったビーフパスカードなどの料理を楽しめます。腕をふるうのは、パリでミシュランガイドの星を獲得した吉武広樹シェフ。テラスには、料理にフレッシュな味わいを添えるハーブが植えられています。夜になると、福岡市街地の夜景が見事です。

レストランや展望台のある建物の入口にコンポストバッグ入りの箱を設置。野菜を無駄にしないように来園者にも呼びかけました。すると、20kgの生ゴミを入れておくだけで微生物が分解して堆肥を作ってコンポストバッグに興味を持たれる来園者もいたため、『森のキオスク』で販売することになりました。


 

しぼりたて牛乳やソフトクリームがある『森のキオスク』

『森のキオスク』では牧場で放牧されている牛からしぼったミルクも販売されており、それを隣接する建物にあるレストランに運んでいます。また、そのミルクから作った濃厚なソフトクリームも味わえます。

他にもキャンプ場で使用する消耗品や、ロゴTシャツ、コンポストバッグなどが置いてあります。キャンプには欠かせない薪もありますが、それは油山の森にある広葉樹や針葉樹を活用したものです。


クリーンな太陽光発電でCO2削減に貢献

屋根に太陽光パネルを設置し、レストランの厨房で使用する電気など、一部は太陽光発電を活用しています。そして館内のモニターで、太陽光発電がCO2を出さないクリーンなエネルギーであることの啓発も行っています。

6人まで利用可の「フリーサイト」と「区画電源オートサイト」があります。「デイキャンプサイト」、「ソロキャンプサイト」などに加え、2024年からドッグランサイトとドッグランコテージもオープンします。


 

本格的なキャンプグッズが揃うショップやカフェも

『焚火ひろば』の前の建物には、『スノーピーク アブラヤマ フクオカ』と『スターバックス コーヒー』の店舗が入っています。ドライブで、気軽に見晴らしのよいカフェやショップに立ち寄る感覚で来る人もいるでしょう。『スノーピーク』ではテントやキャンプ道具のレンタルもできるので、購入する前に試してみることもできます。

店舗のデザインには地域産の木材が活用され、地産地消に一役かっています。


 

宿泊者専用のアドベンチャーを提供

『NEUTON supported by CROSS ORANGE(クロスオレンジ)』は、九州初もしくは九州ではなかなか入手できないアウトドアギアや、ユナイテッドアローズのアウトドアブランド「koti」等の商品が並んでいます。今治タオルを乾燥させる時に出る産業廃棄物であった“今治のホコリ”が、カラフルな着火剤として売られているなど、目新しい商品との出合いがあるかもしれません。

またここでは、宿泊者専用のアドベンチャー体験の受付も行っています。ネットコース、ジップトリップコースなどがあり、両方体験することもできます。2024年には森の中をマウンテンバイクで滑走する「トレイルアドベンチャー」も開業します。

 権丈取締役は「都市部から近い油山で風の心地よさや陽の温かさを体感し、それがどれほど豊かなことなのか、改めて感じていただきたいですね」と語ります。

福岡型サステナブルツーリズム推進事業

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